【2017年12月7日】エレクトロニカ/ノイズ・ミュージック、今と昔

ポピュラー音楽の世界では、ここ数十年、リズム主導というか、ビートを聞かせる音楽が主流となっています。私の若い頃からもう数十年、ずっとそうです。かつて坂本龍一さんは「ポップスというのはドラムとベースが鳴っている音楽のこと」のような発言をされていました。的を得ているのではと思いました。(ウロ覚えなので、違ってたらスミマセン)

 

 

私自身、まずリズム感が合わないとリピートして聴きませんし、耳に残るのはドラムとベースの音だったりしました。
これは私だけではないみたいで、実際に、60年代のロックやポピュラー音楽はエレキ・ギター、70年代はキーボード (シンセサイザー含む) の、それぞれの音の進化だったように、後聴きですが感じられますが、私が音楽を聴き始めた70年代の後半からのロックやブラック・ミュージックやポップスは、リズムの進化及びドラムの音の工夫が、ある意味必須課題のように取り組まれていました。ボクシングの格言流に言えば「リズムを制する者は世界を制す」です。

 

 

そんな感性でずっと音楽を聴き続けてきましたが、最近はドラムの入っていない音楽も聴く時間が増えてきました。当ブログでも度々取り上げている、いわゆるエレクトロニカと呼ばれるジャンルの音楽です。ドラムのビートやベースのフレーズのないものが多いのですが、普通にスッと入ってきます。
そして、そう感じているのは私だけではないようです。同時多発的に増えているみたいです。

 

 

そのような音楽の聴きどころはと言われると、私の場合は「ノイズとメロディ」です。ノイズは、今世紀になって「グリッチ」と呼ばれる、耳に優しいノイズ音が出現して以来、急に身近になりました。耳に優しいノイズというのも変な言い方ですが、ノイズが文字通りの雑音ではなく、楽曲の一部として、単なるアクセントではなく音楽として鳴っているという意味です。
そしてメロディも、ポピュラー音楽の定型のコード進行から大きく外れているけど、昔のようにアバンギャルドに聴こえず、ポップに聴こえるのが多くなってきている気がします。

 

 

なぜかと考えてみました。思ったのは、昔は (既存の音楽を) 壊すのが目的だったノイズ・ミュージックですが、今のノイズ/エレクトロニカのミュージシャンたちは、ただ破壊するのではなく、ノイズをどのように再構成したらポップに聴こえるのか、に創作の趣旨が変わってきているんじゃないかと。
そんな耳で聴くと、随所に「聴かせる工夫」がなされているノイズ/エレクトロニカの音楽が、とても多い事に気付きます。作っている方々は多分そんな事は考えてなく、普通に自身の気持ちの良い音を構築しているだけだと思いますが。

 

 

大昔、かのビートルズがデビューして大ブレイクしていった頃、それまでの音楽に馴染んできた世の中の大人は 「こんな雑音のどこがいいのか」と思ったそうです。これは揶揄を込めた表現ですが、実際音楽的見地からみても的を得ており、ビートルズの音楽には、それまでの音楽よりもノイズ成分がタップリ含まれています。(実はそれがよく聞こえる理由でもあります)
それから僅か半世紀ちょっとで、現在のノイジーなエレクトロニカ音楽がポピュラー音楽のジャンルの一つとして市民権を得ている事に、大袈裟かもしれませんが、AIやスマホだけでなく、こんなところにも人類の進化を感じます。

 

 

 
グーテフォルク「グーテフォルクと流星群 − tiny people singing over the rainbow−」(’07年)。
ポップス側からのエレクトロニカへのアプローチ。決してテクノ風なポップス、ではありません。ポップなエレクトロニカ、です。キラキラして繊細な音像は、ジャケットのイメージそのままです。
久しぶりに検索したら、ニュー・アルバム「グーテフォルクの声飛行 〜 Hello tiny people ! I will catch you 〜」が、今年8月にリリースされていました。