【2018年2月16日】ジャケがイイ!(第10回) 〜 パットD & レディ・パラドックス「カインド・オブ・ピース」

このところの大雪でリサイクル・ショップに全く行けてなく、今回は過去のジャケ買いからピックアップ。大満足の一枚です。
ちなみにシリーズ化していますが、ここで紹介しているのは、リサイクル・ショップの価格500円以下コーナーにジャンルレスで一緒くたに置いてあるCDの中から、ジャケットのみで選んだものです。もちろん、私の知らないアーティストたちです。(今まで紹介してきたCDたちはあまりにマニアックなので、誰も読んでなかったりして…)

 

 

 

 

このCDは、数年前にとあるショップで手にとって、あまりに繊細で美しい風景と、その人工的な画像処理のさじ加減も絶妙なジャケットにしばし見惚れてから、即購入したものです。ジャケット通りの繊細でメロウな音でした。ここまで音とジャケットのイメージが一致しているのも、そんなに見当たらないのでは。ジャンルはヒップホップです。
パットD & レディ・パラドックスは、イギリスのトラックメイカーとラッパーのコンビ。このアルバムは’07年のリリースです。

 

 

ヒップホップというと、今だに、やんちゃなおにいちゃんが自分や属するコミューンのことを喋り倒すというイメージを持っている方々が多いように感じます。(そう思ってるのは私の知人だけかな?)
でも実際はいろんな表現があって、中にはこのアーティストのように、繊細でメロウな音楽性な方もいらっしゃいます。

 

 

思えばパンクやニュー・ウェイヴなど、ジャンルそのものがブレイクした時というのは、衝動やアイディアにテクニックが追いつかない感じで、そこが魅力でもありました。
ヒップホップも同じくで、テクニックは稚拙でしたが、それまでにない全く新しい音楽として現れましたが、パンクと違い、マニアレベルから一般レベルに、それこそあっという間に広がりました。

 

 
このアルバムの特徴は、サンプリング音源に昔のジャズが目立っていることです。ほぼサンプリングのみで楽曲を組み立てているにもかかわらず、絶妙のミックスで、つぎはぎ感はさほど感じません。ジャズライクなピアノの音色が全体に大きくフューチャーされていて、それが全体の色彩感を決定づけています。なんかいかにもイギリス人的な、曇った感じのするトラックです。細部のこだわりも尋常ではなく、すごく時間をかけて作り込んだと思われます。
そんなトラックに、女性のラッパーの声が乗っかるのですが、このラップも、優しく語りかけてくる感じで、とても聴きやすいです。時々ゲストの女性ボーカリストがメロディを歌います。

 

 
全世界 (英語圏) 的にヒップホップは今、音楽的にも商業的にもポップ・ミュージック界を席捲していて、過去と比較すると現在が最盛期です (ケンドリック・ラマー、エミネム、… )。でも、あくまで過去と比較すると、であって、実はまだまだ今後も進化し続けるかもしれません。それ程、いろんなジャンルの音を呑み込んでヒップホップは前進し続けています。

 

 

そして、このアルバムのような音も、そんな新しいヒップホップのひとつです。このような形でヒップホップが成熟するなど、’80年代当時は夢にも思っていませんでした。一時の流行りで終わると思っていました。私に慧眼がなかったということでしょう。