【2019年1月1日】ベースの可能性は無限大 〜 プリンス&レヴォリューションのベースレス・サウンドを思い出す

数日前に完成した「続いていく世界」ですが、何度も聴き直してみて、更に音を削りました。削ったのはベースの音です。

一番まで、ドラムのビートとエレピのコードのみで構成して、二番からベースラインを入れることにしました。

 

 

(余談)

一番を「一題目」と書こうと思い、キーボードを打ったところ変換しなかったので、もしかして漢字が違っているのかなと思って検索したら、「一題目、二題目…」という言い方は、石川県と富山県のみで使われている方言だそうです!しかも他県の人には意味が通じないレベルの。これは思ってもいませんでした。ちょっとしたショックを受けました。。

 

 

それで、その二番 (笑) から入るベースラインですが、ルート以外の音を、ベースソロといった趣きで、キーボードでですがフリーダムに弾いています。

私はギターもキーボードも、ソロのフレーズを展開出来るテクニックというか想像力がなく、時々入れたい時はすごく苦労しているのですが、ベースなら、自由に楽しくフレーズが浮かびます。高校生の頃、PILやジャパン、ストラングラーズといったニュー・ウェイヴのバンドの個性的なベースラインに魅せられてから数十年間、曲を聴くとまず耳が反応するのがベース (とドラム) だからかもしれません。

 

 

そして逆の意味で、ベースを排した曲にも耳が激しく反応しました。有名なのは、プリンス&レボリューションの「ホエン・ダヴズ・クライ」「キッス」。共にNO.1ヒットです。

プリンス本やネット記事各種にも、ベースレスのこれらの曲についての言及は多いのですが、その殆どが「凄い」「画期的」といった賛辞のみで、「ベースを排した効果」までは詳しく言及されていません。私が目を通した限りですが。

 

 

 

プリンス&レボリューション (というかプリンスさん) の曲は、大体がビートが尖って先鋭的です。曲の骨格自体がそうなので、普通に演奏をすると、普通に尖ったファンク・ミュージックになります。演奏がやたらと上手いので尚更です。ともすれば、完璧過ぎで息苦しくなりかねません。

 

 

ところがベースを抜く事によって、曲の構造に大きな穴が空くというか、足元が不安定になるというか、風通しがよくなるというか、そんな効果が生まれています。完璧な音が、やや不安定な音になる、そしてそれがいい感じで響いています。

「キッス」の12インチ・ヴァージョンでは、通常ヴァージョンのあと続けて始まるのが、ベースの入ったインスト・ヴァージョンです。普通にカッコいいです。でもプリンスさんは、この普通のかっこよさが気に入らなかったのでしょう。

 

 

 

そして「パープル・レイン」収録の「ダイ・フォー・ユー」では、ファンク・ミュージックでは常識の、4泊目のスネアのビートも排しています (前作までに時々みられたこのスタイルが、この曲で完成している)。

 

 

この曲は、ベースもシンセの弱音でルートに合わせているだけなのですが、更にドラムのビートにまでも穴を空けています。そしてメロディは全っ然動きません。Aメロが「レ」の一音。サビは「ミ」と「ファ♯」の二音。ドラム&ベースの不安定さを、メロディラインをあえて動かさないことによって曲の安定感をキープしている、そんな普通のポップソングと逆の構造を、この曲は表現しています。これがポップに聴こえるから不思議です。アルバム「パープル・レイン」のベスト・トラックの一曲だと感じます。

メドレーで続く次曲「ベイビー、アイム・ア・スター」が、同じBPMだけども4泊目にスネアが叩かれているので、余計にその対比が味わえます。「ベイビー〜」の方は、普通にカッコいい曲です。

 

 

 

「虎は死して皮を残す」という諺があります。貴重な皮 (才能) は全人類の為に遺されたものです。ちっぽけな島国の、辺境の地に住む普通の人(私) にも、その皮の一部は、心の地肉となって生きています。自曲を作りながらふと思ったことです。