【2020年7月25日】死ねない時代が来たときに 〜 業田義家「機械仕掛けの愛」を思い出す

 

 

 

とあるニュースでグラフを見たことがありますが、ここ100年程で人の寿命は大きく伸びています。これは、新生児の死が大きく減って、老人の寿命が単純に伸びている為です。

そして、只々長生きを願った時代から、如何に生きるか?を考える時代に、現代はなりつつあります。

この事件は、そんなこのごろの、そして次世代の死生観を考えさせられました。

 

 

 

業田義家さんのマンガ「機械仕掛けの愛」は、心を持ったロボットたち (AI) の、その心の葛藤を描いた短編連作です。

その中に、こんな話があったのを憶えています。残念ながら、リサイクル・ショップに売ってしまったので手元はありません。

 

 

 

 

ある母子家庭で、しあわせに働いていたロボットいました。

ある日、不慮の事故でその子どもが亡くなってしまいました。残された母親は元々身体が弱いうえに子どもを失ったショックで急激に身体が弱り、遂に自分の死期を悟った時に、亡くなった子どもの思い出を永遠に忘れないようにと、そのロボットと約束しました。

 

母親が亡くなってから長い年月が過ぎ、ロボットもかなりガタがきました。ボロボロになって働きながらも、自分が破棄処分されたら思い出が全て消えてしまう、約束が守れなくなると、涙を流して悲しみました。

 

そんなあの日にふと、ICチップに自分の記憶を移していろんな電化製品に使えば、自分が破棄処分されても、自分の代わりに二人のことを思い出してくれる、そう考えました。

そして実行した後にロボットはとうとう寿命が来て壊れてしまったのですが、その最期はとても穏やかな表情でした。

 

その後、いろんな家庭のいろんな電化製品のAIが、そのロボットの記憶を受け継ぎ、時々断片的に母子のことを思い出すようになりました。

 

 

 

 

こんな話です。

タイトルも忘れてしまい、細かいところは?ですが、何度も何度も読んだので、大筋は合っていると思います。

何度も読んで漠然とながら思ったのは、死ぬのは怖いし寂しいけど、何かしらのバトンを誰かに渡すことが出来た、と実感出来れば、結構満足して死んでいけるんじゃないかと言うことです。

 

 

それは人によっては、我が子であったり、家庭であったり、趣味や仕事の技術であったり、名誉であったり、何らかの表現作品であったり。

つまり、死を受け容れることとは、充実した生を送ること、に他ならないのではと。

 

 

 

この「機械仕掛けの愛」シリーズは、この話に限らず生と死を考えさせられる話が多く、読む度に思うところが多く得るモノが多い、そんなマンガでした。

簡単に死ねないこの時代。もしかしたら、自然に死ねない分、余計にかかるストレスが大きくて大変なのかもしれません。昔からみると天国のような時代、の筈なのですが。。