【2021年6月12日】フィッシュマンズの映画が公開されます 〜 「ロング・シーズン」を聴きつつ思う

 

 

 

フィッシュマンズは’91年にメジャー・デビュー、’99年に、ボーカル・ギター・ソングライターの佐藤伸治さんの死去により解散した、唯一無二のダブ・ロック・バンド。

私がJ–POPをちゃんと聴き出した’90年代、渋谷系の幾つかのアーティストと共に、どっぷりとハマったバンドです。

 

 

フィッシュマンズの音楽は、レゲエ/ダブを基調にしたグルーヴ・ミュージックです。とは言っても、ポップなメロディとイメージ豊かな歌詞や、突出した個性的なボーカルなど、レゲエ/ダブを聴かない人でも十分に楽しめます。初期の音は、とっつき易いけど入ると懐が深く、後期のは、ポップ・ミュージックを逸脱しつつも普遍的な音。そんな音楽性です。

 

 

私が初めて聴いたのは、一曲しか入っていないアルバム「ロング・シーズン」(‘96年)。ちなみにこの年には「空中キャンプ」、翌年には「宇宙 日本 世田谷」と、いわゆる「世田谷三部作」と呼ばれる作品群が相次いでリリースされています。

 

 

 

「ロング・シーズン」を聴いて驚いてから過去アルバムを遡って聴いたのですが、思ったのは、このバンド、スカ/ロック・ステディ〜ルーツ・レゲエ〜ダブ、と進化したレゲエ・ミュージックの歴史を体現しているなあということです。

初期の頃は、のどかなロック・ステディっぽいポップな楽曲でしたが (それでも随所にダブな仕掛けがある)、ポリドールに移籍後の音はダブに急接近していきます。

以前読んだフィッシュマンズ本「僕と魚のブルーズ」によると、メンバーの音響に対する拘りが凄くて、プライヴェート・スタジオに入り浸っていたと、確か記してありました。なので、この時期の音が本意だったのではないかと推測します。

 

 

それで「ロング・シーズン」ですが、このアルバムでは、そのレゲエ/ダブからも離れつつあります。リズムからもメロディやハーモニーからも逃れつつあります。それでいて小難しくもなく、一言で言えば「自由な音楽」です。もし家に小さい子どもがいたら毎日流して聴かせていたいなあと感じる、自由で気持ちの良い音です。小さい子に聴かせたいと思った理由は、この音を毎日聴くと、無垢な心が豊かに育ちそうな、そんな音だからです (笑)。科学的根拠は全くありません。

 

 

 

今になって映画化されるということは、再評価されているのでしょうか?日本よりもワールドワイドで聴かれそうな音楽性なので、再評価はかつてのファンとしてはとても嬉しく思います。

 

 

 

佐藤伸治さん。

←「ロング・シーズン」、→ 2nd. アルバム「キング・マスター・ジョージ」。その音楽性の変化 (進化) を楽しみつつ聴いています。