月別アーカイブ: 2018年9月

【2018年9月30日】前々回の続き 〜 宅録の本がありました。江森丈晃 編・著「HOMEMADE MUSIC」

 

 

前回に続いて、またしても前々回「奥田民生ニュー・アルバム『カンタンカンタビレ』に思う」の続き。

 

 

この稿は後から思うところも多く、本日思い出したのは「そういえば宅録音源ばかり集めたガイドブックを買っていた筈」。本はこないだ整理したばかりだったので、簡単に見つかりました。この本も売りに出す予定でしたが、表紙の色褪せが半端でなく、それに何となくまた読むような気がして手元に置いといた本です。

 

 

この本は、純粋に宅録ばかりを集めた本ではなく、選者の独断による「宅録っぽい音」や「宅録的なコンセプトで制作された音」も含んでいて、私のような音楽マニアには、読みどころ満載の素晴らしい本です。紹介されているのは、8割がた私の知らないアーティストでした。

 

 

パラパラと適当に読んでいたのですが、選者の言葉のいくつかから、宅録は「純粋なもの」と定義付けられているようです。取り敢えず声を発したい、ギターの音を残しておきたい、そんな思いから全ての宅録はスタートしている、そんな風に読めました。なので、私が宅録ではないとした、打ちこみによる音楽も、それがプライヴェートな音なら宅録のカテゴリーに括られています。読んでいて、その方が正しいのではないかと思い直しました。

 

 

ディスク・ガイドだけではなく、間あいだにインタビューや宅録の歴史を考察した記事なども載っています。一番面白く読んだのは、「She Talks Silence」という、山口美波さんのソロ・プロジェクトの制作日誌。副題に「初めてのギターから、CDのリリースまで、She Talks Silence のその日、その日々にあったこと、850日ぶん (抜粋)。」とあります。

 

 

この本を買った頃は、まさか自分で曲を作って、CDまでリリースするなど、夢にも思っていませんでした。She Talks Silence の制作日誌も、他人事として読んでいたんだろうなあと思います。(読んだ事を憶えてなかったので)

今読むと、時々このブログに上げている私の楽曲制作日誌と何となく似ていて、その悪戦苦闘ぶりは身につまされる思いがしました。月並みな言葉ですが、感動しました。

生きていく上で、「やりたい事」に勝る優先事項はありません。そして「やりたい事」=「必ず出来る事」です。あらためて思いました。

 

 

 

(制作日誌・1日目)

 

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【2018年9月29日】前回の続き 宅録あれこれ 〜 懐かしくは聴こえない、コイルの宅録ポップス

私が勝手に作った宅録の定義ですが、それは「自宅の空間の空気」が鳴っている事です。なので、今私が演っているような、PCソフトでのレコーディングは、いくら自宅で行なっていても、それは宅録ではありません。私の部屋で作っても、喫茶店にPCを持ち込んで作っても、同じ音です。宅録はあくまでも「プライヴェートな空間で奏でられた音」です。

 

 

宅録は、インディーズではよくありますが (私もそう)、実はごく僅かですがメジャーのレーベルからもリリースされています。

そんな数少ない、メジャーでリリースされた宅録アーティストの中で、私が入れ込んでアルバムを聴き続けていたのが、二人組の宅録ユニット「COIL」(コイル) です。1st.アルバム「ロープランド・ミュージック」が’99年のリリースなので、19年前です。

 

 

このユニットを初めて知ったのは、音楽雑誌 (雑誌名は忘れました) に付録で付いていたミニCDからです。早速探して購入をしました。2曲入っていて、その2曲は「キリギリス」「64」。「キリギリス」は、ノイジーなギターが気持ちいいロック、「64」は繊細でリリカルなミディアム・バラード。両曲ともにローファイな、いかにも宅録という音質なのですが、それがいい感じに心に響きました。

 

 

このコイルと同時期に、こちらは音楽ファンの間で大きくブレイクした中村一義さんの1st.アルバム「金字塔」も、ちゃんとしたスタジオで演っているにもかかわらず、宅録っぽい音ざわりを残した音質でした。

それが極めてプライヴェートな匂いのする曲とマッチしていて、当時は言及されていませんでしたが、中村さんの音像イメージをエンジニアさんがちゃんと理解して作ったんだなあと、今更ながら感心します。決してハイ・ファイな音ではありませんが、大音量で聴くとスコーンと突き抜けていく、そんな音像です。

 

 

ロッキング・オンの松村雄策さんが寄稿のコイルの1st.アルバムのライナー・ノーツによると、このアルバム制作にあたって、ビートルズの「ホワイト・アルバム」を意識していたそうです。

「ホワイト・アルバム」は、何度か当ブログに取り上げている程よく聴いたアルバムですが、たしかに言われてみれば、「ホワイト・アルバム」は、宅録の元祖のようなアルバムです。メンバーのプライヴェートな匂いが立ちこめています。だから自分はこのアルバムがこんなに気に入っているのかなあと、ライナー・ノーツを読みながら思いました。

 

 

自分がPCソフトで音楽制作を始めてから、PCソフトで作ったものを聴くのが減ってしまいました。ローファイな音を聴くとホッとしてしまいます。人の感性は中々にワガママというか、難しいものです。自分の事ながら。

 

 

 

 

散らばっていたのを集めました。もう数枚あったかと。一番上が、ファースト・アルバムです。今気づきましたが、中村一義さん「金字塔」のジャケットも「タバコ+灰皿」ですね。偶然だと思いますが。