【2017年11月14日】引き算の音楽「ダブ」〜 ジャケがイイ!第7回 「テンプル・オブ・ダブ」

ジャケット+タイトルで、このアルバム「テンプル・オブ・ダブ」を購入しました。何しろ「ダブの神殿」で、このジャケットです。久しぶりに、ジャケットの水墨画のようなダブの世界を堪能出来るかと期待しました。

 

 

ダブというのはそもそも、’70年代にレゲエから派生した音楽です。ボーカルを抜いたトラックの楽器音に、リバーブやエコーを大きくかけたり、ドラムやベース音を強調したりして、当時はポップスというよりも実験音楽的に聴かれていました。
とは言っても実験音楽的な聴きにくさとは無縁で、下手したらレゲエよりもローカル臭が希薄な為、ポップに聴こえます。’80年代のヒップホップの誕生は、このダブの影響を大きく受けています。

 

 

誰が言い出したか定かではありませんが、ダブは「引き算の音楽」という言い方がとてもシックリきます。
普通の音楽は、建築物のように音を足していって完成する、いわゆる「足し算」で成り立っていますが、ダブはそこから更に音を削っていきます。その削り具合が、このダブという音楽の醍醐味です。
私の好きなダブのアルバムは、そのどれもが、極限まで削って削って、最後に残った芯のような音を奏でているものです。

 

 

「引き算の音楽」には、もう一つの意味があると思います。それは、音楽の中から「私」すら引かれている事です。ロックやポップスやヒップホップでは顕になる「私性」が、ダブの中では見当たりません。

 

 

 

 

このアルバムは、日本人のダブ・アーティストによるオムニバス盤で、’99年に発売されています。
時代を反映して、ダブ的な曲よりもヒップホップ的・ドラムンベース的な曲が目立ちますが、音の感触は明らかにダブです。
1曲目「ビーチ・エコー & リム・ショット・ウェイヴ」のベースラインなど、私のようなオールドスクールなダブのファンには、たまらないフレーズです。大昔のジャマイカ産ダブにあったような気がしました。

 

 

こういう音響を聴かせる音楽は、この後21世紀に入って、エレクトロニカやEDMの隆盛により、人力の音源は一気に減ってしまったように感じます。時代の流れとは言え、ちょっと残念です。