ソフト・セルは、‘80年代初めのニュー・ウェイヴ・シーンに突如現れたエレクトロ・ポップのユニットです。メンバーは、マーク・アーモンドさんとデイヴ・ボールさんの二人。その音楽性は、その後のブロンスキ・ビートやコミュナーズ、ペットショップ・ボーイズ等に影響を与えています。(ペットショップ・ボーイズとマーク・アーモンドさんは近年共演もしています)
当時は異端というかB級というか、そんな扱いを受けていたユニットでしたが、私は大好きで、リリースされたアルバム3枚共当時買っています。
先日のデイヴ・ボールさんの訃報を受けて、ごく個人的なソフト・セルの思い出や所感を語ってみます。(以下、敬称略)
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ソフト・セルは、同時期のゲイリー・ニューマンやジョン・フォックス等、ドライでクールなエレクトロ・ポップ勢、デュラン・デュランやスパンドゥ・バレー等のヨーロピアン・ポップなニュー・ロマンティック勢、どちらとも一線を画す音楽性でした。一言で言えば、ソウルフルなエレクトロ・ポップです。
そのソウルフルでエモーショナル、を担っていたのは、ボーカルのマーク・アーモンドです。ソウルフルと言っても、ブラック・ミュージック的ではなく、オペラ的・シャンソン的な、ちょっと芝居がかったクラシカルなソウルフルさ、です。そしてトラックもかなりわちゃわちゃしていてエモーショナルです。
多分ですが、ソフト・セルのルーツは、ジョルジオ・モロダー及びドナ・サマーの電子ディスコ・サウンドではないかと推測します。ドナ・サマーはゲイ・コミュニティーで圧倒的な支持を得ていました。ゲイであったマーク・アーモンドが多大なる影響を受けた事は容易に想像出来ます。まさに、ドナ・サマーとスロッビング・グリッスルの幸福な出逢い、な音楽です。
1st.「ノン・ストップ・エロティック・キャバレー」(‘81年) では、まだ普通のエレクトロ・ポップでしたが、2枚目・3枚目とアルバムを重ねる毎に、音世界はどんどん混沌としていきます。セールスダウンしていったのもしょうがないかなと。
私は3枚目「ディス・ラスト・ナイト…イン・ソドム」(‘84年) の1曲目「Mr. セルフ・ディストラクト」が大好きで、このアルバムを買ってからしばらくこの曲を1日数回聴いていた日々がありました。
この曲は、まさに遅れてきたグラム・ロックです。いやこの曲だけでなく、このアルバムのキッチュ且つ破壊的な音は時代を超えて鳴っています。
今「Mr. セルフ・ディストラクト」をリピートしながら書いています。謹んでお悔やみ申し上げます。

メルカリでは日本盤のオビ付きのも出回っていました。私の所有しているレコードは輸入盤です。

