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【2018年4月30日】前回の続き 〜 パンクは俳句のよう

アナザー・サニー・デイの爽快なギター・ロックを聴いていて、大昔のパンクを思い出しました。

 
パンクがロック・シーンにブレイクしたのは、1976年〜77年。有名なパンク・バンド、クラッシュの歌のタイトルにもあります (1977)。そして翌年の1978年位から、既にニュー・ウェイヴと呼ばれはじめ、音楽性も多様化しています。

 

 

私の個人史に照らし合わせると、’77年が中一、’78年が中二。本格的 (?) にロックを聴きはじめたのが中二ぐらいなので、あと1年早く生まれていたら、もしかしたらパンクに夢中になっていたかもしれません。この辺の年代の1年2年の差は大きいです。
でも今思うに、日本ではパンクは終わるどころか始まってもいませんでした。単なる海の向こうのロックのいちムーヴメントでした。私が田舎の中学生だったせいかもしれませんが。

 

 

その頃のロックはイデオロギー先行で聴かれていました。音楽雑誌も、今では信じられない位にイデオロギッシュでした。「ミュージック・マガジン」「ロッキング・オン」「フールズメイト」「ロック・マガジン」…。どれも今思うに、思想誌のようです。「ミュージック・マガジン」「ロッキング・オン」は今でも発刊されていますが、もはや違う雑誌です (笑)。
今思うと、音楽にそこまで自己のイデオロギーを埋没させて聴けるという行為は、ある意味しあわせだったと感じます。

 

 

 

この手の話は今までたくさんの方々が語っているので省きます。私が語りたいのは、パンクの音楽性についてです。
パンクを聴いて誰もが思うのは「これは自分でも出来そう」です。歌はとりあえずがなり立てて、ギターはコードを3つほど押さえることが出来れば、曲も作れるし演奏も出来ます。
この「出来そう」というのが最大のポイントです。
実際に、バンドを組んで、せーので音を出した時の開放感を、パンクはテクニックがなくてもいとも簡単に体験できます。なんというか、すごく自由になったような、背中に羽根が生えたよう、に感じます。これは体験談からです。

 

 

ところが実際の話、パンク・ロックの音楽スタイルは、自由に演るどころか制約だらけの中で成り立っていました。
ギターはディストーションで歪んだ音で、使うコードは2つから、多くて4つぐらいまで。そしてその進行はスリー・コードのパターンに忠実。楽器編成は、ドラムス・ギター・ベースのスリーピース、プラス、ボーカル。
ドラムは極力オカズ (タムやシンバル) を叩かず、リズムのキープ。ギターはカッティングのみで、ソロは弾かない。ボーカルは基本シャウトで、音程のキープは特に気にしなくてもよい。そして曲は大体2〜3分、長くて4分以内。
ここまでがんじがらめに決めごとが多い、自由度が低い紋切型の音楽スタイルなのですが、だからこそ逆に、誰もが出来て、誰もが解放されたのではないかと思います。

 

 

日本でも「俳句」という表現スタイルがあります。5・7・5に季語を入れて言葉を当てはめるだけで、それなりに心情が表現出来ます。
思うに、何も制約のないところから作品を生み出せるのは、ごく一部の才能の豊かな方のみではないかと。普通の人は、何らかの決めごとの中での方が、自分を解放させやすいんじゃないか、そんな気がします。

 
そのパンクを含めたギター・ロックも、今ではメジャー・シーンからどんどん衰退していっていますが、こうやって愛する人がいる限りは、その火種が消えることはないと思います。

 

 
※ 今回の記事に興味を持たれた方は、合わせてこちらをご覧下さい。(「はじめて作った曲」)

 

 


パンクと言えば、何と言ってもセックス・ピストルズ。

 

 

 

 

 

 

ふたつのコードと言葉で心の闇を表現した、ジョイ・ディヴィジョン。ボーカルのイアン・カーティスさんは自殺してしまいました。(後にニュー・オーダーとして活動再開、現在に至る)

 

【2018年4月30日】ジャケがイイ!(第11回) 〜 アナザー・サニー・デイ「シエスタ」ーーギター・ロックの進化を思う

 

 

 

リサイクル・ショップで見つけたCDです。
牧歌的なイラストの紙ジャケで、アーティスト名「アナザー・サニー・デイ」、アルバム「シエスタ」なので、私はてっきりアンビエント系のエレクトロニカかアコースティック系の音かと思い購入しましたが、違いました。イントロからギターが鳴り響く、ギター・ロックでした。
久しぶりに爆音でギター・ロックを聴きながら運転をして、実に爽快でした。

 

 

調べると、このアナザー・サニー・デイ、J–ロック・バンド「ストレイテナー」のメンバーのサイド・プロジェクトで、「わかりやすく、楽しく、脳にストレスのかからないバンドを創る」をテーマに結成されたとのことでした。このアルバムは2011年にリリースされています。

 

 

ところで、この音で「わかりやすく、楽しく、脳にストレスのかからないバンドを創る」なので、メンバーは根っからのロック好きなのでしょう。ロックを聴かない方が聴くと、ノイジーで速くてストレスフルな、典型的なギター・ロックの音に聞こえると思われます。

 

 

 

以前、いつ書いたか忘れましたが、20世紀に発明された代表的な楽器音として、エレキ・ギターのノイズ音を挙げたことがあります。楽器音として認知されたのは、1960年代のロックからです。
エレキ・ギターのノイズ音と、ピアノや弦楽器などのそれまでの楽器とは、決定的な違いがありました。それは、「聴く人を選ぶ」ところです。
エレキ・ギターの音は、受けつけない方にとっては耳触りな騒音にしか聞こえませんが、好きな方にとっては中毒性すら生じてきます。誰が聴いてもそれなりに楽しめる従来の楽器音とは、ここが決定的に違います。

 

 

きっとこのバンドのメンバーはギターの爆音が日常の音となっていて、ほんとに普通に気持ちよく音を出すと、このような音になったのでしょう。この音には、昔のロックのように、ノイズに込めた感情や情念や自我などというものは存在しません。ただただ気持ちよくノイジーです。
私の少年時代の、ロックの非日常感覚から数十年。こういう音を聴くと、人の感性も随分変わってきているなあと感じます。