「ばらの花」は、くるりのサード・アルバム「チーム・ロック」(‘02年) の先行シングルとしてリリースされた楽曲。当時は3人組だった事と多彩な音楽性から、’80年代のロック・バンド、ザ・ポリスを引き合いに語る評論家もいました。(この曲「ばらの花」とザ・ポリスのヒット・シングル「見つめていたい」との類似性からも)
この「チーム・ロック」ですが、わりと素朴なバンド・サウンドのファースト、鋭利なオルタナ寄りのセカンドに比べて、一口で言うと雑多性に富んでいて、今となっては、その後のくるりの進む過程を象徴しているようなアルバムです。
当時の私はこのアルバムをかなり聴き込んでいます。聴きながら「これは『チーム・ロック』じゃなくて『チーム崩壊後ロック』だよなあ」と思いながら聴いていた事を憶えています。
そして「チーム・ロック」を聴いて、やっとくるりの本性というか、核が見えた気がしました。それまでは、ギター・ロックのバンドのようだけど、どうも掴みどころのないなあと思っていたのですが、その、掴みどころがなくていろんな方向に伸びていく音楽性自体が個性だった訳です。やっぱり、普通のギター・ロックのバンドではなかったなあと。
この「ばらの花」。くるりの音楽性のいろんな方向の一つに「メロディ」がありますが、この曲は少し前に当ブログに上げた「ブレーメン」同様に、スタンダード的なメロディの美しさが突出しています。
教科書に載るような曲と言うと、まさに教科書的で面白くないのを想像しますが、この曲はそうではありません。
ヘッドフォンで聴くと耳を引っ掻かれるような乾いたギターのイントロに始まり、儚い水滴のようなピアノ音でフェイド・アウトしていく、凝りに凝った楽器の響きやアレンジ、淡々としつつもじわじわと盛り上がっていく曲想ーー特に2番サビ後の転調パート〜コーダへの展開、等、今聴き返しても全く色褪せていません。
そしてここまでサウンドの完成度が高いと、「ドラえもん」に出てくる秀才美男子キャラ「出来杉くん」のように、隙がなく逆に面白く聴こえなかったりもしますが、そこに乗るのが、岸田繁さんの、とつとつと・もっさりとしたボーカルというところが、この曲を魅力的に聴かせる最大の要素ではないかという気がします。
「ばらの花」、音楽の授業で初めて接する若い子たちの耳に、どのように響くのか本当に楽しみです。
たくさんの方々にカバーされている「ばらの花」。この画像は、YouTubeでの折坂悠太&中村佳穂のライブ・ヴァージョンから。