隠され続けたのは、私たちの「声」なんだーー。
「一億玉砕」から「民主主義」へ――。言葉は変われどその本質は変わらなかった戦後の日本。そんな中、それを言われると世間が困るような「声」を持つ人たちがいた。…
著者の高橋源一郎さんはポストモダン文学の作家であり文芸評論家です。
彼の文章は難解なものも多いのですが、こういった企画もの (これはNHK「100分で名著」シリーズの一冊) だと、鋭い論評を誰にでも読みやすい文章に簡潔にまとめていて、まさに文筆業の「必殺仕事人」といった趣も感じます。
これは昔から思っていましたが、彼は音楽の世界で言うと坂本龍一さんを連想させます。(彼もまた、自由に作るソロ・アルバムだとノイジーで反ポップの作品が多かったのですが、請負い仕事のサウンドトラックだと、途端に気恥ずかしいくらいのベタで聴きやすい美メロを奏でます)
余談ですが、お二人とも学生運動してたり、学生結婚してたり、その後複数回結婚したり、土木作業員をしてたり、思想がリベラルだったり、なので勿論原発反対だったり、そんなところも共通しています。
高橋源一郎さんは太宰治を大変に評価しているというのは、彼の読者に周知の事実です。なので、そんな彼が太宰治を論じる本、これは面白くない訳がありません。実際大変面白く、レコーディングの合間に読み始めましたが、気付けば読了していました。
では、どんなところが面白く読めたのか。
この本「太宰治 斜陽 名もなき「声」の物語」が出版されたのは ‘22年。そう、ちょうどコロナ禍の真っ最中です。
高橋源一郎さんはきっと、戦中〜戦後の太宰治を論じながら、重ねて現代の日本を論じたかったに違いありません。
コロナ禍において、同調圧力の怖さ・自己保身の醜さを、嫌というほど見せつけられた事は記憶に新しい事です。ワクチン接種、トイレットペーパー買い占め、マスク警察etc…。あの時私は、戦時中もこんな感じだったのかな?と思ったものです。
冒頭の文章は、出版社の紹介文です。日本人の本質は戦後どころか今現在も変わってないなあと。
特に感銘を受けたのは、特別章「太宰治の十五年戦争」です。太宰治及び「斜陽」に全く興味のない人にこそオススメします。本屋やブックオフとかで見かけたら、是非立ち読みでもいいので一読を。


