【2021年1月23日】のんと矢野顕子の対談から

 

 

少し前に借りたナイン・インチ・ネイルズのCD、通称「スティル」を聴いていて、その不安定なメロディと歌声から、数十年前の、神経症に悩んでいた頃の坂本龍一さんの楽曲を連想しました。

この「スティル」の楽曲も、ナイン・インチ・ネイルズ ーー トレント・レズナーさんの不安定な魂の表出のように感じます。

 

 

思えば数十年前、自分の心 (や生活) が極めて不安定だった数年間、のめり込んで聴いていた音楽は、不安感を煽るというかくすぐる、そんな音楽ばかりだったような気がします。

つまり、リスナーの心の状態とアーティストの心の状態が、シンクロする訳です。

 

 

今、ナイン・インチや当時の坂本さん、それから同じ頃聴いていたイギリスやニューヨークのアーティストたちの不安定でノイジーな音楽を聴いても、当時ほど心に響きません。割と客観的に聴けます。つまり、今の私の心の状態が、それらの音楽と同調しないからでしょう。

これは極めて健全なことのように思います。それが、成長するというか、(いい意味で) 大人になる、ということなのではないかと。

 

 

 

この対談での矢野顕子さんの発言に、こんなのがありました。

 

 

「…たまたま自分は音楽が得意で、それを喜んでくれる人がいて、すごく長いことそれをやっているけど、それをやるためには私自身が健康でなくちゃいけないこととか、気持ちがちゃんと普通であること、それがすごく大事だと思ってます。…」

 

 

矢野顕子さんの音楽に触れたことのある方なら分かるかもしれませんが、彼女の音楽は、結構ナチュラルに狂気 (言葉は悪いんですが。。) が宿っています。数十年前の音源には、踏み外しているのもあります。

彼女自身、狂気に呑み込まれずに、表現を、平々凡々に暮らしている私たち一般人にポップに届ける為に、日々普通に暮らすことの大切さを、身に染みて感じてらっしゃるんじゃないかなと。以上、勝手な憶測ですが。

 

 

そしてそんな表現だからこそ、狂気からは程遠い、狂気には全く同調出来ない私にも、ちゃんと届くんじゃないかと感じます。

 

 

ちなみに対談相手ののんさんも、余り言われないですが、結構危ない方です。演技の見る目が全くない私ですら目を惹きつけるものがある、そんな俳優&アーティストです。矢野さんのいい影響を受けて、突き抜けた歌を歌って欲しいです。