【2017年9月25日】ジャケがイイ!第4回 〜 テッド・レノン「ウォーター&ボーンズ」

ここ数回はハズレが続いたジャケ買いですが、久しぶりに「当たり」が出ましたので紹介します。テッド・レノン「ウォーター&ボーンズ」(’06年)。今回は、ジャケットからだけではなく、アーティスト名・アルバム名を含めての購入です。

 

ライナー・ノーツによると、彼、テッド・レノンは、かのジョン・レノンの遠縁なんだそうです。名前からして何か関係があるんじゃないかと、実は購入前から期待してました。
ジョン・レノンの息子さんは二人いて、二人ともミュージシャンとして活動しています。そして、二人とも非常に地味ながら、音楽の力に寄り添った素晴らしい作品をポツリポツリと残しています。レノン姓に惹かれたのは、そんな理由からです。

 

このアルバムですが、ほとんどの曲がアコギ一本で、時折ドラムや他の楽器がさりげなく入ってきます。とはいっても、アコギはビート/リズム楽器として機能していて、いわゆる弾き語りのフォークソングではありません。ジャック・ジョンソンなどの流れの、サーフ・ミュージックにカテゴライズされています。
このギターの音がとても良くって、クセになります。オーディオ的に緻密で良いという意味ではなく、曲に合ったアナログライクな音質です。以下、テッド・レノンのインタビューから抜粋。

 
「ベイマツ (松) の床と、松の壁、アメリカ杉の天井 (50年代初期の古い材木) でできている居間で録音したんだ。だから自然のスピーカー・ボックスみたいな。本当に暖かいアコースティックとして作用してくれたんだ。かっこいい録音機材なんか使わなかったよ。古臭いアナログの4トラックで録音したんだ。全部ライブでね」

 
そしてアルバム・タイトル「ウォーター&ボーンズ (水と骨)」。アルバム・タイトル曲の歌詞から抜粋します。

 

 

 

 

もうどれだけたつ?
時間の感覚がすっかりなくなってしまったんだ
負けても勝ってもどうでもいい
だって僕らはほとんど水と骨みたいなものだから
水と骨みたいなものなんだよ
水と骨…水と骨さ
僕らはただの水なんだ

 

訳 : Akiyama sisters inc.e.

 

 

 

 

 

この諦念感というか枯れた感じが、今の私にとてもしっくりきます。こういう世界観の歌詞は、自分も書きそうだなと思った程です。実際の話、未発表で知人など数人にしかお聴かせしていない歌ですが「ツチニカエル」という、この曲に似た世界観の曲が自曲にあります。それから、上手過ぎない不安定な歌唱も、曲に合っています。(このような歌ばかりではなく、家族を歌った歌やラヴ・ソングもあります)

 

先日のブログの文脈で言うと、叫べない人は呟けばいいんだと、こういう歌を聴いていると思います。つぶやきは独り言なので、誰にも聞かれずにそっと消えていく儚い言葉かもしれません。が、呟いた本人 (自分) だけは、ちゃんと聞いています。
そんなところから、自分のいるべき世界が、少しずつ広がっていくような気もします。

 

私は自宅ではほとんどお酒を呑まないので、呑みながら音楽を聴くということはほとんどないのですが、この「ウォーター&ボーンズ」は、秋の夜長にウィスキーでも舐めながら、余生に想いを馳せつつ聴くのに、ピッタリのアルバムだと思いました。早速実行に移してみようかと。