【2018年7月17日】否定の向こう側にあるもの 〜 ジョン・ライドン (PIL) 来日に思う

既に過ぎていますが、パブリック・イメージ・リミテッド(以下PIL)が、今月3日と4日に来日してライブを行いました。ライブに足を運ばなくなってから久しく、来日情報の収集もしてないので、こんなふうに後から何かの拍子で知ったりします。

 

 

PILは、’70年代末〜’80年代初頭のパンク〜ニュー・ウェイヴ・ムーヴメントのトップランナーとして、セールスよりも同時代の先鋭的ミュージシャンやコアな音楽ファンに人気があったバンドです。ジョン・ライドンさんはそのフロントマンというか、バンドそのものというか、そんな人です。

 

 

PILが初めて来日したのは、調べたら’83年でした。この時のライブはレコーディングされていて、後から「ライブ・イン・トーキョー」としてリリースされています。この時のライブは、ドラムス以外のメンバーが全て辞めてしまって、敏腕のスタジオ・ミュージシャンを連れての来日でした。

当時私もPILは熱心に聴いていて、初来日ライブも、中野サンプラザまで観に行っています。

同じ頃、バウハウスや、ちょい後にニュー・オーダーなど、ニュー・ウェイヴ・バンドが次々と来日していて、私は殆ど観に行っています。人生で一番外タレのライブに行ってた数年間でした。

 

 

音の印象は、実はよく憶えていません。生でジョン・ライドンが歌っている!それだけしか印象にないので。(笑)

実は今、思い出そうと、このブログを書きながらその「ライブ・イン・トーキョー」を聴いているんですが、まず演奏が上手く、スタジオ盤のように破綻していません。まあスタジオ盤ではキース・レヴィン(脱退メンバー)がギターを弾いていたからなんですが。

 

 

音質も良く(音質が良いのは当時のこのアルバムのウリだった)、歌も、ヒップホップを通過した今の時代に聴くと、普通に上手く聴こえます。こういう風に、メロディよりもリズムに寄り添って歌う人は、当時のロック・シンガーにはいませんでした。今聴くと、ほんとに歌上手いです。当時は気がつきませんでした。

 

 

そしてこのアルバムでは、以前のアルバムの曲も、ファンキーでポップにアレンジされています。今聴くとポップなロックとしてちょうど一般受けしそうに聴こえます。

以前書いた「メタル・ボックス」もそうですが、今の時代のサウンドがようやくPILが鳴らしていた音に追いついた、そんな気がします。聴くなら、今が旬かもしれません。(笑)

 

 

当時、ジョン・ライドンさんは「否定」の人として通っていました。セックス・ピストルズでそれまでのロックを否定して、PILでピストルズなどパンクロックを否定して、キリスト教を否定して、当時のサッチャー政権を否定して…。

だけども今になって思うに、この人は超肯定的な人なんじゃないかという気がします。

 

 

否定的な人は、まずオーラが暗い。ところがこの人は一貫して明るいオーラを放ち続けています。自信たっぷりです。

否定していくと結局のところ「自己否定」に行き着きます。思想家や文学者やミュージシャンの例外なく、否定的な表現者には自殺してしまう人が多いのもその為です。

ジョン・ライドンさんはおそらく否定すること自体が目的ではなく、肯定すべきものをハッキリと見据えていたからこその否定精神だったのでしょう。揺るぎないものがあるのでしょう。こっちの方が正しいのに、こっちの方が確かなのに、何で世の中(やアンタ)はウダウダしてるんだ!と。

 

 

30年以上経った今でも、時代に埋もれずに堂々と鳴り響くPILの音楽を聴いてそう思いました。

そうか、もう30年か。。人生、春の夜の夢の如しですね。

ジョン・ライドンさん、周りに嫌がられる頑固ジジイとして絶対に長生きしそうです。

 

 

 

 

「ライブ・イン・トーキョー」。ジャケットごと残っていました。数年前に再発売された時に購入したものです。バックは当時の新宿東口。こんなところに立って普通にジャケ写になるのもすごいですねー。(同じ場所に私が立っても、仕事帰りのくたびれたサラリーマンにしか見えないと思います)