出版されてもうかれこれ数10年前になりますが、「音楽と言葉」という本が手元にあります。私は数年前に今後も読み返すであろうと思った本、数10冊のみを残して、その他全てリサイクル・ショップに売ってしまったのですが、この本はその残った貴重な本の一冊です。
この「音楽と言葉」、副タイトルの「あの人はどうやって歌詞を書いているのか」でも分かりますが、数名のミュージシャンに「歌詞」について特化したロング・インタビューを行なっている本です。ミュージシャンはかなり偏った人選で、ピンっとくる人とこない人がはっきり分かれると思います。私はピンっときたので購入しました。
いつ出版されたのか、気になって本の最終ページを見たら、初版発行2009年、とありました。自分自身、音楽制作を全く行なっていない、どころか、やろうとも思っていない頃です。
それでこの面々の中で、面白くて何度も読み返したのが、コーネリアス (小山田圭吾さん) のインタビュー記事です。小山田さんが他のミュージシャンたちとは全く違った地平に立って歌詞を書いているというのが、このインタビュー記事を読むとよく分かります。
コーネリアスの歌詞は、他のミュージシャンと全く違った目線で書かれています。その秘密に迫っているような記事です。インタビュアーは何とフリッパーズ時代の歌詞 (小沢健二さんの歌詞) についても問いかけていて、小山田さんはごく普通に淡々と答えています。小沢ファンも面白く読めます。
コーネリアスの歌詞の大きな特徴は、先ず、無邪気な子どものように言葉をパッと発声したところからスタートしている点にあります。発声される言葉の響きを最重要視して書かれているその歌詞は、しかし音なしでただ読んでも、ちゃんと面白く読めます。
ターニングポイントは、アルバム「ファンタズマ」(‘97年) でしょうか。ここから、「ポイント」(‘01年)、「センシュアス」(‘06年)、と、音も言葉もミニマム化していきます。
前作「メロウ・ウェイヴス」(‘17年)を経て「変わる消える」「火花」等、最近の曲 (ニュー・アルバム収録) を聴く限り、そんな言語センスが更にポップに分かりやすく開けて表現されているようです。アルバムのリリースが待ち遠しいです。