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【2023年4月16日】村上春樹の長編小説「街とその不確かな壁」そのタイトルに思う

 

 

 

数日前に、村上春樹さんの長編小説「街とその不確かな壁」が発売されたのを、Yahoo!ニュースで知りました。以前に書きましたが、私は「海辺のカフカ」を最後に、村上春樹さんの長編小説は読んでいません。村上春樹さんのに限らず、小説を読むのは老後の楽しみにとっておこうと思ったからです。

 

 

しかし、この「街とその不確かな壁」。タイトル買いしようかと思った程です。村上春樹さんの小説の世界を、テーマを、ズバリ一言で表すならこれなんじゃないか。それぐらいに身も蓋もないタイトルです。

 

 

 

村上春樹さんの長編小説 (「海辺のカフカ」までの話。念の為)」は、現実世界と心的世界がはっきり分かれているという事もなく、ごっちゃに進行します。オチもはっきりしません。でも決してSF小説、ファンタジーではありません。それが、面白いところです。

 

 

メガネの度数をちょっと変えただけで、全然違って見えるこの世界。好きな事をしている時、好きな人と会っている時、過ぎるのはあまりにも早い時間。その逆だと、5分経つのが遅いこと、遅いこと…。

 

 

つまり私たちが「現実」と思っている世界は、きっちり・カッキリと決まっているものでは全然ないという事です。そんな「現実」を言葉で表現しようとすると、村上春樹さんの長編小説のような、グニョグニョ・ウネウネとした世界になるんじゃないかなと。

それはまるで、音楽が顕す世界のようだなあと感じます。

 

 

【2023年3月11日】将棋AIと音楽

本日と明日、将棋の王将戦が行われています。平成の天才である羽生九段と、令和の天才である藤井王将の対局という事で、将棋ファンはWBCそっちのけで盛り上がっている最中です。

ところで今回の王将戦の特徴として、藤井・羽生、両方のファンの多くは、勝敗にそれ程拘らずに観戦しているところではないでしょうか。一つの時代の節目を見届ける、そんな心持ちなのではないかと。

 

 

 

私は時々ですが、ネットのAbemaTVで将棋観戦をしています。ここ数年ではAIが棋士よりも遥かに強くなって、画面に表示される、AIが示す評価値 (どちらが勝ちやすいかを示す数値) を目安に、解説の棋士が盤面を解説する、といった具合です。

 

 

その解説で、誰ともなくよく使われる表現に「この手は人間じゃあ指せない」「ヒト的にはこちらですね」といった言い回しがあります。どういう事かと言うと、そう言われるようなAIが示す最善手は、多くの棋士たちが今までの経験で培った手とは全く異なる発想の、いわば人間の常識外れの一着だからです。

 

 

私はそういう場面を観ながら、時々ですが、AIが作る音楽を思います。評価値が高い、を音楽に置き換えると、より多くの人の心に、より深く刺さる、になるのではないかと思います。

 

 

残念ながら音楽では、まだビートルズや美空ひばりをシミュレートしているというレベルです。しかしそのうち将棋の最善手のように、人間の想像を遥かに超えたメロディやリズムが、AIから奏でられるのではないかと、実は思っています。音楽には、科学的・数学的な側面もあるので。そんな日が来るまで生きていたいなあと。