前回、「…パンク〜ニュー・ウェイヴの (私の好きな) ミュージシャンたちは、誰かれ問わず、一枚として似たようなアルバムは作っていませんでした。…」と書いてから思ったのですが、これは、のめり込んで聴いていた当事者の感じた事であって、聴かない人にしてみれば、このジャンルの音楽は、どれもこれも同じ曲に聴こえたのではないかと思います。
まあこれは、時代から遠く離れた今だからこそ、そう思えるのですが。
「ニュー・ゴールド・ドリームス ポスト・パンク & ニュー・ロマンティック ‘79 – ‘83」(2013年)
このCDは、ヴァージン・レコード40周年記念コンピレーション・アルバムです。画像はジャケットと歌詞カード。
ヴァージン・レコードは、多くのニュー・ウェイヴ・バンドの音源を世に出したレーベルです。一般的には地味だったニュー・ウェイヴ・バンドですが、その中では割と知られているバンドも多いです。3枚組で40曲も収録されていて、今聴くとその歴史が俯瞰出来ます。
それで、商業ベースは考えずにそれぞれが好き勝手に音を出していた、初期のニュー・ウェイヴのミュージシャンたちですが、今思うに、唯一共通するところがあったように思います。それは「音楽=ビート」という認識です。どのバンドも拙いテクニックながらも、リズム、ビート、を何とかモノにしようと悪戦苦闘していたと感じます。
このアルバム、1枚目から3枚目まで順番に聴いていくと、このジャンルの変遷が伝わってきます。1枚目の尖っていた音が次第にカドが取れていき、3枚目になると、ちょっと変わった普通のポップスと化しています。この頃は既に、ニュー・ウェイヴというジャンルは終わっていて、ニュー・ロマンティックになっていた頃です。
今聴きかえすと、面白いのは1枚目です。どのバンドも「ビート」という未知なるモンスターと闘っています。この中には、パブリック・イメージ・リミテッド(PIL) とかフライング・リザーズなど、今の時代に聴いてもポップに通じる音源もいくつかあります。
以前にも書いたことがありますが、当時先鋭過ぎて驚いたPILの「メタル・ボックス」の音など、下手したら今が聴き頃だと感じます。「ポップ」だと感じる耳も、日々変遷していってるという事なのでしょう。
というところで、先日見つけた、とあるサイトの音源。その元「メタル・ボックス・メンバー」PIL (ジャー・ウォブル&キース・レヴィン) の二人の新曲を聴けました。
(一年ちょっと前に、この二人の「EP」と「メタル・ボックス」について語った記事はこちらから。↓クリックで読めます。)
今度の新曲も、基本は同じです。反復するドラム&ベースにフリーキーなノイズ・ギター。メロディを歌わないヴォーカル。
それでもこの曲には、確かなイノヴェーションの跡がみられます。決して「メタル・ボックス」の二番煎じではありません。一歩ずつ一歩ずつではありますが、今もビートとの闘いは続いているんでしょう。