【2022年1月13日】スピッツ「フェイクファー」「小さな生き物」を聴く

スピッツは言わずと知れた、今や国民的ロック・バンド。私もひと頃ハマってよく聴いていました。何度か当ブログ記事にも上げています。

今回は「フェイクファー」(‘98年) と「小さな生き物」(‘13年) を借りて聴きました。どちらも今まで未聴です。

 

 

 

 

 

 

スピッツが好きな人の多くは、おそらく「変わらない、あの感じ」を求めて、いつも新譜を楽しみにしているような気がします。私もそうでした。

「あの感じ」は、言うまでもなく、草野マサムネさんが紡ぐメロディと歌声です。スピッツの歴史は、草野さんの歌を活かす歴史でもあるなあと、15年の時を隔てたこの2枚のアルバムを続けて聴いて感じました。

 

 

スピッツの歌は一聴、エイトビートのロックをバックに草野さんがサビメロで「♫あーー」的な伸びる高音さえ歌えば、どんな曲でもスピッツ・マジックがかかると思いがちです。しかしその「♫あーー」がマジックに至るまでには、実はいろんな仕掛けが施されている、マジックのネタが仕込まれている、そんなところが、じっくり聴き込めば聴き込む程感じられました。そんな仕掛けが効いているので「マンネリ」ではなく「エヴァーグリーン」と感じられるのでしょう。

 

 

誰が言ってたのか忘れましたが、表現の質をキープする為には、変化していく・壊していくことが大事だ、というようなフレーズを聞いた?読んだ?ことがあります。現状維持=衰退、ということなのでしょう。

スピッツも曲作りの際は、試行錯誤でバタバタともがいているに違いありません。水上では安定した優雅な姿で佇み、水面下ではバタバタと激しく水を掻いている白鳥のように。

 

 

 

 

ところで、何度もリピートしているのが、実は「小さな生き物」の方。「小さな生き物」、先ずこのタイトルからして、それまでのアルバムと一線を画しています。

スピッツは、草野さんの歌詞は、基本的にファンタジーを歌ってきました。現実から離れた「小さな世界」を、です。アルバム・タイトルも「フェイクファー」「インディゴ地平線」「ハチミツ」…、と、記号的です。

 

 

ところがこの「小さな生き物」。タイトルからして実に分かりやすく現実世界につながっています。いつものようにファンタジーを、小さな世界を歌っているのですが、自然と現実世界に接続している、そんな印象を受けました。

 

 

調べたら、このアルバムは東日本大震災後に生まれていました。草野さんが震災後にパニック障害でダウンした影響が、ストレートに出ているタイトルと歌詞だなあと、あらためて思いました。

それは音にもあらわれていて、贅肉を削ぎ落としたようなメロディとアレンジ (かなり練られている) 及び演奏です。私はすっかり気に入ってしまいました。

 

 

 

震災後のアルバムと言えば、私はくるりの「坩堝の電圧」を、当時よく聴いていました。雑多的でパワフルで、ファンファンのトランペットがポジティブに高らかに鳴っているアルバムです。スピッツの「小さな生き物」、当時出逢っていたら、きっとヘビロテ化していたことでしょう。

歌詞カードを読みながら聴いていると、まるでコロナ禍の今の歌のように思えてきます。