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【2018年1月27日】「次はお前の番だ」と促す表現 〜 ECDさんを追悼します

古今東西ロック・ファンの間では伝説のバンドで、「ロック史上のオールタイム・ベスト」とか「ロック史上最も偉大なアーティスト」とかの企画に必ず上位に上がるのが、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドという、’60年代のわずかな期間に活動していた、ニューヨークのバンドです。

 

 

アンディ・ウォーホールという、当時ポップアートの世界で名を轟かせていたアーティストがプロデュースしたことで、当時注目されたというデビュー・アルバムは、3万枚しか売れなかったそうです。売上3万枚のアルバムが、後年になって歴史的な価値をもつとは、当時誰も思ってもいなかったと思います。

 

 

ブライアン・イーノさんという、このブログでも度々出てくる、世界的に評価されているアーティスト/プロデューサーがいます。イーノさんは、ヴェルヴェッツの1st.アルバムを評して、こう仰っています。
「アルバムは3万枚しか売れなかったが、その3万人全員がバンドを始めた」

 

 

この言葉はこのアルバムの良さを一言で表した比喩ですが、実に的を得ています。
そう。たくさん売れる=優れたコンテンツ、とは必ずしも限りません。いやもちろん、たくさん売れるものは、それはそれで優れたコンテンツなのですが、私が言いたいのは「不特定多数の多くの人たちに聴かれるコンテンツ」以外にも、優れたコンテンツは数多くあるということです。

 

 

私の思う優れたコンテンツ (音楽・表現) は、リスナーに一方的に消費されるものではなく、イキのいい種子のようなものです。
聴いた人の心の中で育って、花開いて、形を変えて (=聴いたその人の表現として) また世に出て行く、そんな性質をもったものです。ただ鑑賞するに飽き足らず、「あ、これなら俺にも出来そうじゃない?」と、思わずやってみたくなる、そんな音楽 (表現) です。

 

ECDさんの音楽や文章は、まさにそんな、人を駆り立てるような表現。鑑賞物・消費材ではありません。リスナーはメジャーなアーティストに比べて少ないながらも、かなりの割合で、何らかの表現活動をされているんじゃないかなと、誠に勝手ながら思っています。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1st.アルバムを買った、3万人のように。(それは別に音楽に限ってはいません)

 

 

本人が逝ったので、これでECDさんの持っている全部のバトンが、リスナーに渡った訳です。次は、私やあなたの番です。

 

 

 

【2018年1月25日】ECDさん亡くなる

 

 

 

 

一般的には知られてない方ですが、Yahoo!ニュースのトップに出ていました。
舞台俳優にはじまり、日本のヒップホップの元祖、最高齢のラッパー、反体制の活動家、文筆家、そして三児の父親と、いろんな顔があった人ですが、私にしてみると、この人こそ「ピュアな表現者」でした。このブログでもなんども取り上げています。
何を書こうか、思いが渦巻いて、言葉に詰まってしまいました。
心よりお悔やみ申し上げます。