【2017年5月16日】昨日の続き〜映画「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」

前回「音楽の原風景」を書いていて思い出したのが、青山真治監督、2005年の近未来SF映画「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」です。
上映されてから既に10年以上経っているので、ネタバレを気にせず書きます。

 

ストーリーはとてもシンプルです。
2015年、レミング病というウイルスにより世界中で自殺者が増え続けている中、ある音楽家の奏でる音楽に発病を抑える効果がある事が分かります。ある日、とある大富豪が、レミング病を発病している孫娘のために、その音楽家に演奏を頼みに行きます。はじめは断りますが、パートナーの死などいろいろあった後、その孫娘の前でライブをする事になります。

 

映画評的な深読みや俳優の演技については、この場では省きます。
この映画の見どころは、音楽です。
その音楽家の奏でる音楽というのが、いわゆる「ノイズ・ミュージック」です。実際にノイズ音源を制作しているシーンやライブのシーンなども多く、青山真治氏は、オーディエンスにノイズを聴かせたいがためにこの映画を作ったのでは、とも思いました。

 

圧巻は、ある晴れた日に、空と大地しかないだだっ広い草原で、宮﨑あおい演じる病気の大富豪の孫娘の前で、浅野忠信演じる音楽家が、ノイズ・ミュージックのパフォーマンスを行うシーンです。
10分以上続くノイズは、大音量で聴くととても気持ちよく、心が解放されていく感覚を味わえました。私はレミング病ではありませんが、病気が治った気分になりました。(笑)

 

 

このブログを書くために、DVDを引っ張り出して、数年ぶりで何度目かの鑑賞をしましたが、このシーンは何度観ても飽きません。youtubeにそのクライマックスのシーンが抜粋されてアップしてありました。興味のある方は、ぜひご覧ください。アップしたのは多分、私と同じくよっぽどこのシーンが気に入った方だと思います。一人でも多くの方に、体験してもらいたいと思って。
ありえないシチュエーションですが、同じく雲ひとつない晴れた日、観客が自分以外誰もいないフジロックの場で、轟音を奏でるバンドを一人で体験している、そんな図を、ちょっと想像しました。

 

人類が生まれるずっと前から在る大自然とノイズ・ミュージックは、絶妙にマッチングしており、このシーンを観るだけでもこの映画の価値はあると思います。
他の人々にどういう風に観られているのか、ちょっと気になり、Amazonのカスタマーレビューを覗いたところ、賛否両論が極端でした。
褒めている方は全て音楽に触れていました。逆に言えば、クライマックスの轟音ノイズが心に響くか響かないかで、この映画を楽しめるか退屈かが分かれるという事です。
映画の好きな方よりも、音楽が好きな方に観るのをお勧めします。音楽の原風景を、感じ取れるかもしれません。