立花ハジメさん「H」を聴いていて思い出したのが、同時期のバンド、マライア。早速レコード棚を探したら「うたかたの日々」(‘83年) がすぐに見つかりました。何故思い出したかと言えば、カラカラに乾いた音像とサックスの音が「H」と共通しているからではないかと。音楽性は全く違うのですが。
このマライアというバンド、当時はジャズ/フュージョンでもなく、プログレでもなく、ニュー・ウェイヴでもなく、実に微妙な立ち位置に居たバンドだったと記憶していますが、今、レコードを聴きながらいくつかのサイトでこのバンドの情報を収集していたら、近年になって国内及び海外で著しく高く再評価されているとのこと。
それでこのアルバムですが、先ず音質がとっても良いです。今になって45回転2枚組にした理由が分かります。音の質感をダイレクトにリスナーに届けたかったからでしょう。PIL「メタルボックス」と同じ発想なのでしょう。
余計な音を一切削ぎ落としたミニマルでクリアな音像から聴こえてくるのは、日本的なるものと西洋的なるもののせめぎ合いです。当時の流行りだったテクノ的な音響やゲートリバーブなどが極力入ってないのも、古く聴こえない理由ではないかと。ベースのアタック音とマリンバのオーガニックな音色が特に印象的です。
この頃は、YMOや一風堂その他、オリエンタルな旋律を奏でていたミュージシャンが結構いました。オリエンタルな旋律は周期的にリスナーの需要があるみたいです。近年だと、中田ヤスタカさんのサウンド (Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ等) が一般に受けています。
そのほとんどの全てのミュージシャンたちは、ちゃんと「オリエンタル」と意識して鳴らしています。まああざといと言えばあざといのですが、その中で、ごく一部、あざとさを突き抜けて遥か昔の日本っぽさを感じさせてくれるアーティストが、今も昔も確かに存在しています。
マライアもそんな音を鳴らす貴重なバンドです。マライアの東洋的な旋律は、今だからこそ正当に聴かれる音なのではないか、そう感じます。美しい旋律は鳥肌モノです。40年近い年月を経てあらためて聴くと、同時代のどのバンドとも違った地点に立って・違うところを見据えて、音を鳴らしている、そう感じます。(褒めすぎかな)
このアルバムはYouTubeでも聴けるので、興味ある方は是非一聴してみて下さい。