この「花火」は実に歌いやすいメロディで、練習をしようと思いちょっと歌ってみたところ、上手く歌えたのでそのまま本テイクにしました。この曲もそうですが、最近作る曲はどれもボソボソと歌っていて、大きな声を出さなくてもいいので、以前みたいにカラオケボックスやスタジオに行ったりしなくて、部屋で歌えて、そのままレコーディング出来ます。
以前は部屋で練習する時も、駐車場を見て隣人が居ないのを確認してから声を出していましたが、最近は、ボイス・トレーニングをそこら辺を車で乗りまわして車内で行い、本番は部屋で歌うパターンです。世の中の、宅録というかベッドルーム・ミュージックの、ボーカルの殆どが大きな声で歌わないのも、レコーディング環境が大きく影響しているのではないかと思います。
この曲のメロディは、いわゆる和テイストのヨナ抜き音階 (ドレミソラの5音で構成) ですが、最初から最後までヨナ抜きだと、私のメロディ・スキルだと単調に聴こえるので、Aメロは普通の音階で、サビをヨナ抜き音階にしました。サビのワビサビ具合が強調されたのではと、自分では思っているのですが。
そして今回の目玉?である「舞踏会」の朗読ですが、実はこれが一番時間がかかりました。中々OKが出せませんでした。一つは、歌と違い、最終のイメージが定まってない為「どうなったら終了」か、中々決める事が出来なかった事。
そしてもう一つは、この朗読の核心のフレーズである「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生のやうな花火の事を。」の「生」を、どう発声しようかと迷った事です。
原文のように「ヴイ」と発声すると、聴いた人に伝わるのかなあと。かといって、歌にルビを振る事は出来ません。
散々迷っていろいろ試した挙句、このフレーズは、二回くり返すことにしました。
最初は原文の通り「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生 (ヴイ) のやうな花火の事を。」
その後に「私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生 (せい) のやうな花火の事を。」これで、聴いた人には伝わるんじゃないかなと。
一応レコーディングは終了しましたが、この曲はミックスダウンが結構大変そうです。ソフトなので、やり直しは容易なので、いい感じに聴こえるまでいろいろと試してみます。
あんまり変わっていませんが、歌詞の最終ヴァージョンです。一番最後の「芥川龍之介『舞踏会』より」も、ちゃんと音源に入っています。
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花火
僕は君と花火みてる
祭りの夜は深けていく
川の土手の手前の方で
缶ビールを片手に
僕は君と花火みてる
久しぶりに君とみてる
従姉妹たちと海まで歩いた
花火の色はあの頃のまま
※ 赤や藍色
白や黄金色
それぞれの色で輝く
遠く近くに生まれては消え
やがて夜空に吸い込まれる
僕は君と花火みてる
何もかもが夢のよう
確かなものに触れたくなって
君の手をギュッと握りしめる
※ 2回くり返し
(朗読)
「其処には丁度赤と青との花火が、蜘蛛手に闇を弾きながら、将に消えようとする所であつた。明子には何故かその花火が、殆悲しい気を起させる程それ程美しく思はれた。
『私は花火の事を考へてゐたのです。我々の生 (ヴイ) のやうな花火の事を。』
『我々の生 (せい) ような花火の事を』
暫くして仏蘭西の海軍将校は、優しく明子の顔を見下しながら、教へるやうな調子でかう云つた。」
ーー芥川龍之介「舞踏会」より